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Virtual Transit Mall 京都四条

- 仮想都市における群集歩行シミュレーション -

 

はじめに

このページでは,本研究室で開発中の群集行動シミュレータCBSの活用事例の一つとして,京都四条通のトランジットモール計画の検証シミュレーションに関して御説明します.

四条通の混雑解消と市街地活性化を目指してトランジットモールの導入が検討されています.現況では歩道幅が片側3.5m,車道全幅15m(4車線)ですが,これを車道全幅9m(2車線)として歩道を片側6.5mに拡幅する計画が検討されています.2007年10月には計画対象地域全域で車道を1車線化する大規模な社会実験が実施され,計画の影響調査が行われました.

社会実験は,簡易柵で車道を仕切って1車線化した状態で実施されましたが,歩道と車道を仕切る既存の安全柵は撤去されず, 歩道中央に広範囲に障害物(既存の安全柵,既設の歩道と車道間の段差)が残された状態で実施されました.また,計画ではバス停付近の歩道拡幅も検討されていますが,社会実験は,バス停付近は既存の歩道幅(計画より狭い幅)の状態で行われています.

この種の社会実験には多大の費用を要し,実験の実施期間には市民生活にも大きな影響が及びます.その一方で,上記のようにトランジットモール完成後の歩行空間の状態を完全には再現できず,トランジットモール化の効果が必ずしも適正に計測されているとは言い難い面もあります.

これに対して,仮想空間での歩行実験では,改修後の歩行空間のレイアウトを完全に再現可能であり,仮想空間故に市民生活への影響を懸念することなく種々のケース(レイアウトのバリエーション)に関して検討を重ねることが可能です.以下では当研究室で実施したシミュレーションの具体的な内容に関して説明します.

 

対象領域と歩行者交通調査

シミュレーションの実施に先立って,下図に示す領域の各断面(流出入断面1〜32)で歩行者数計測を実施しました.33〜38の断面では通過歩行者数を計測し,シミュレーションの再現性を確認しています.調査は通常期の土曜日の午後に実施しました.

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この他,対象領域内のバス停からの乗降者数調査,対象領域内の信号間隔とオフセット設定の調査,典型的分岐点での経路選択率調査などを実施し,マクロな歩行者同行をシミュレーションモデルの標準値として入力して,群集シミュレーションを実施しました.なお,シミュレーションは下図に示すsim 1(現状),sim 2(歩道拡幅1),sim 3(歩道拡幅2)の3種に関して実施しました.

現状再現

はじめにsim 1(現状)のアニメーションをご覧下さい.

CBSコード [mpg 17MB]

 

歩道拡幅の効果

次に,sim 1(現状),sim 2(歩道拡幅1)の結果を比較したアニメーションをご覧下さい.

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CBSコード [mpg 8.9MB]

下図は,平均歩行速度の時系列の比較です.歩道拡幅によって歩行者の流動性が向上し,さらに東西方向の信号の廃止によって平均歩行速度が増加していることが確認できます.

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河原町付近のバス停周辺の歩道デザインの効果

次に,sim 1(現状),sim 2(歩道拡幅1),sim 3(歩道拡幅2)の3種を比較した結果をご覧下さい.下図は,平均歩行速度および群集密度の時系列です.

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バス停付近に歩道の狭小部を設けたsim 3でも,sim 1(現状)と比較して,十分な平均歩行速度の上昇および群集密度の低下が見られます.sim 3では,sim 2と比較すると改善幅は少なくなりますが,レジャー空間のサービス水準指標A(窮屈感や歩行の制限がなく自由なスペースで対向者を回避できる;群集密度0.21人/平米以下)をクリアーできます.

最後に歩行空間の状況をアニメーションでご覧下さい.

CBSコード [mpg 13MB]

 

おわりに

本研究室で開発中の群集行動シミュレータCBSはマルチエージェント型のシミュレータですので,個々人の行動追跡が可能です.ここで紹介した以外にも,例えば個々人が歩行中にどの程度頻繁に歩行方向や歩行速度を変化させているかなど,歩行の詳細も評価できます.このような指標は,歩行の快適性(歩きやすさ)の定量評価指標となり得るものであり,歩行空間の設計を合理的に実施する上でも有用です.今後も様々な都市内歩行空間に関して,本シミュレータを用いた評価を進めたいと考えております.

 

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